腰痛の鍼灸治療

腰痛(腰椎ヘルニア・脊柱管狭窄症・坐骨神経痛)について

腰痛には、ぎっくり腰のような一時的なものから、年中痛みやしびれに悩まされる慢性的なものまで様々あります。

代表的なものとしては、

  • 椎間板が飛び出して神経を圧迫する「腰椎椎間板ヘルニア」

  • 脊柱管が変形して神経を圧迫する「脊柱管狭窄症」

  • お尻の梨状筋という筋肉が神経を圧迫する「坐骨神経痛」
    などがあります。

これらは痛みだけでなく、しびれを伴うことも多く、特に50〜100mほど歩くと痛みや脱力感が出て休まざるを得なくなる「間欠性跛行(かんけつせいはこう)」は典型的な症状です。


一般的な治療について

一般的には電気治療や牽引、湿布などが行われ、最終的には手術を勧められることもあります。
しかし手術を受けて改善する方もいれば、変化が乏しい方、かえって悪化してしまう方もおり、結果は人によって様々です。


慢性腰痛の本当の原因は?

多くの患者さんは「骨の変形が原因」と説明を受けたとおっしゃいます。
ところが実際には、腰が大きく曲がっていても痛みなく元気に歩いている方も多く見かけます。

また、当院で治療した脊柱管狭窄症の患者さんは、症状は消えましたがレントゲン上の骨の変形はそのままでした。
このことから、腰痛の原因を「骨の変形だけ」と考えるのは不自然であり、むしろ筋肉や軟部組織(神経・血管・靭帯など)が大きく関与していると考えられます。

実際に、浅い鍼(数ミリ程度)を行うことで長年の痛みやしびれが改善するケースを日々経験しています。これこそ「骨の変形以外」が原因であることを示しているのではないでしょうか。


鍼灸治療という選択肢

手術は必要になればいつでも受けられますが、何度も繰り返すわけにはいきません。
その前に、まずは体への負担が少ない鍼灸治療を試してみることをお勧めします。手術はあくまで「最終手段」と考える方が安心です。


慢性腰痛に対する鍼灸治療

鍼灸では、まず全身のバランスを整える治療を行います。特に50歳を超えて腰痛を訴える方は「腎・膀胱」の経絡に弱りが見られることが多く、東洋医学的には「腎虚(じんきょ:下腹部の気の低下)」を整える全身治療が欠かせません。

腰痛の場合、足の経絡に反応が出やすいため、足のツボに鍼や灸頭鍼を施します。さらに、骨格の異常に伴って必ず現れる「筋肉の冷え(経筋症)」には、灸頭鍼を用いて改善を図ります。

一時的な腰痛ならこれで大きく軽快しますが、長期にわたる慢性腰痛は1〜2回で完治することは難しく、根気強く治療を重ねていくことが重要です。

慢性腰痛は年齢や経過の長さにより、内臓からの影響も大きいため、五臓六腑の調整や首・肩の治療も並行して行います。丁寧に治療を続けることで、症状は少しずつ軽減に向かっていきます。