逆子の鍼灸治療

逆子(骨盤位)について

妊娠が安定期に入り、25週を過ぎた頃から起こりやすいのが逆子(骨盤位)です。

自然に治ることもありますが、出産当日まで戻らず帝王切開になるケースも少なくありません。

病院で行われる一般的な処置には、逆子体操、外回転術(医師が手で赤ちゃんを回す方法)、帝王切開などがあります。

しかし、東洋医学的にみるとこれらは根本的な治療とはいえません。たとえ逆子が一時的に治ったとしても、原因を取り除けていなければ再び問題が起こる可能性があるのです。

もちろん、どうしても治らない場合には帝王切開が必要になります。ただ、できるだけ自然に改善することが望ましいでしょう。なぜなら、下腹部には**丹田(たんでん)**と呼ばれる気を蓄える重要な部位や、婦人科に関わる大切な経絡(気の通り道)が集中しているからです。帝王切開はこれらにダメージを与え、産後の虚証(体の弱りや冷え)、婦人科系の不調や腰痛のリスクを高める要因となります。

できる限り自然な形で、お母さんも赤ちゃんも心地よく過ごせるような治療が理想です。

逆子の原因

逆子の原因にはさまざまな説がありますが、Finger Testで反応をみると「偶然」や「気まぐれ」で起こるものではないことが分かります。

赤ちゃんは本来、お母さんとの陰陽のバランスを保つために頭を下に向けています。

ところが、逆子で来院される妊婦さんの多くに、下腹部(腎・膀胱の経絡)の冷えや気の弱りがみられます。下腹部が冷えているため、赤ちゃんは頭を下に向けられず、やむを得ず逆子の姿勢を取っているのです。

そのような状況で、無理に外回転術や逆子体操で赤ちゃんを動かすのは望ましくありません。

「北風と太陽」のように、赤ちゃん自身が心地よく頭を下に向けられるように、お灸で自然に導くことが理想です。

逆子の治療

妊娠中のお母さんは、下腹部に赤ちゃんという大きな気の存在を抱えています。そのため、ソフトな治療で十分効果があります。

注意すべき点は、お腹には赤ちゃんがいるため、下腹部・骨盤部、さらに「合谷穴(ごうこくけつ)」など気を降ろすツボへの無作為な刺激は控えた方が安全です。

一方で、予定日を過ぎても出産が始まらない場合には、これらのツボを的確に使うことで効果を期待できます。

逆子の妊婦さんには、ほとんどの場合膀胱経絡に邪気反応がみられます。そのため、まずは膀胱経絡の治療を行います。この時点で下腹部の反応が和らぎ、赤ちゃんが自然に動き出すこともあります。

次に、逆子治療で有名なツボである**三陰交(さんいんこう)や至陰(しいん)**を反応に応じて使用します。ただし、反応がなければ無理に使いません。残りの反応は個別にツボを選び、丁寧に整えていきます。

治療の最後には横向きで休んでいただき、妊娠中に負担のかかる腰や首のこりを和らげます。

また、出産直前に仙骨部に鍼をして筋肉を緩めておくと、骨盤がよく開き安産につながると考えられています。

さらに、ご希望の方にはご自宅で棒灸を続けることをお勧めしています。お灸のエネルギーは赤ちゃんを元気にし、安産を助けてくれます。

出産後の養生

出産を迎えるお母さんにおすすめしているのが「マクリ」です。

昔から使われてきた赤ちゃん専用の漢方薬で、生後24時間以内に与えます。胎内でたまった胎毒や胎便を排出しやすくし、赤ちゃんの消化機能を助けます。これにより、母乳をよく飲み、夜泣きも少なく健やかに育ちやすくなります。

処方は流派によって異なりますが、有名なのは寫心湯(しゃしんとう)に紅花を加えたものです。

ご希望があれば、Finger Testを用いて処方してくれる福岡市天神にある「高山漢方クリニック」などで相談されるとよいでしょう。

これからも、一人でも多くの元気な赤ちゃんとお母さんに出会えることを楽しみにしています。