頭痛の鍼灸治療

頭痛について
明々堂は女性の患者さんが多いため、治療相談の中でも頭痛は上位に挙げられます。
なかには頭痛そのものを主訴として来院される方も少なくありません。
しかし「頭痛」と一口に言っても原因や症状はさまざまで、まずは一般的な頭痛の種類を整理した上で、はりとおきゅうによる治療について述べたいと思います。
頭痛の種類
一般の方でも、風邪や二日酔いで一時的に頭痛が起こることがあります。
これは原因が明確で、時間とともに自然に治まります。
一方で、多くの方を悩ませているのが「慢性頭痛」です。
繰り返し起こるにもかかわらず、現代医学では明らかな原因が見つからないのが特徴です。
慢性頭痛は大きく次の3つに分類されます。
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片頭痛
頭の片側または両側にズキンズキンと脈打つような痛み(拍動性頭痛)が起こります。
光や音に敏感になり、数時間~数日続くこともあります。休息や睡眠で軽減する場合が多く、前兆として「閃輝暗点(せんきあんてん)」と呼ばれるギラギラとした光や星が見える視覚異常を伴うことがあります。女性に多いのが特徴です。 -
緊張性頭痛
長時間のデスクワークや精神的ストレスなどにより、頭全体が締めつけられるように痛みます。頭痛を訴える方の半数以上はこのタイプです。 -
群発性頭痛
一年の決まった時期、決まった時間に起こる激しい頭痛です。目の奥がえぐられるような強烈な痛みが特徴で、男性に多く、季節の変わり目やアルコールで誘発されることがあります。
また近年注目されているのが 薬剤誘発性頭痛 です。
鎮痛剤を常用することで頭痛そのものを引き起こすケースで、薬をやめにくいのが現状です。少しずつでも服用回数を減らすことが大切です。
はりとおきゅうによる頭痛治療
はりとおきゅうで治療する際は、まず掌・腹部・背部に現れる内臓の反応を調べ、全体治療を行います。
頭痛の背景はさまざまで、冷え性、不妊症、更年期障害、精神的ストレスなどが関与します。
具体的には、
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胃腸の弱りや冷え
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下腹部の瘀血反応
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肝・胆の経絡の滞り
などが見られます。
一見関係のなさそうな内臓の反応も、東洋医学では頭痛に深く関与しています。
次に痛みの部位に対応する経絡を探ります。
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額:胃・大腸経
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側頭部:胆・三焦経
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後頭部~首の付け根:膀胱・小腸経
理論だけではなく、最終的には Finger Test で身体の反応を確認し、経絡を特定します。
また頭部の詳細な反応として、
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水分代謝異常(Na)、重金属反応(AHP)
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頚部の筋緊張反応(X1B)
などが現れることがあります。
さらに慢性の頭痛では、後頭部全体に冷えによる経筋反応が入り込む場合も多く見られます。
治療では、全体治療で体質を改善し、重金属や冷えの反応を除去するとともに、再び呼び込まないようにしていきます。
具体的には、
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経筋反応には灸頭鍼
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水分代謝異常には胃腸の調整
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頚部の反応には棘間靱帯を緩める治療
を行います。
頑固な頭痛は体質に根ざしているため、1~2回での完治は難しいですが、根気よく治療を続ければ確実に軽減していきます。
患者さんご自身が「楽になった」と実感されることが何より大切です。
補記:緊急を要する危険な頭痛
頭痛の中には命に関わる危険なものもあります。代表的な疾患は以下の通りです。
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くも膜下出血
発症時刻を特定できるほど突然で、バットで殴られたような激しい頭痛。嘔吐や意識障害、複視を伴う。 -
脳出血
頭痛・嘔吐・眼底出血が三徴候。しびれ、めまい、言語障害を伴うこともある。 -
髄膜炎
発熱を伴い、項部硬直(うなじの強いこわばり)が特徴。 -
脳腫瘍
頭部の鈍痛が徐々に悪化。手足のしびれやけいれん、吐き気を伴う。 -
慢性硬膜下血腫
数か月前の頭部外傷が原因で徐々に血液がたまり、頭痛や麻痺、認知症状が出現。
これらは徐々に痛みが強くなり、嘔吐や麻痺を伴うことが多いです。
また、前日にろれつが回らない、食事中に箸から物を落とすなどの前兆がある場合もあります。
危険な頭痛は MRIやCTで原因を明確にでき、迅速な治療が生死を分ける ため、病院での検査が最優先です。