耳鳴り・難聴・めまい・顔面麻痺の鍼灸治療

耳鳴り・難聴・めまい・顔面神経麻痺について
当院に治療を希望される方の中で意外と多いのが、耳鳴り・難聴・めまいの症状です。時には顔面神経麻痺の患者さんも来院されます。
現代医学では原因がはっきりしないことも多く、初期治療としてはステロイドの点滴静注を1週間行い、その後に抗炎症薬・血管拡張薬・ビタミン剤などを投与して経過を見るのが一般的です。
顔面神経麻痺の患者さんの中には、頚部の星状神経節ブロック注射を定期的に受けている方もいらっしゃいます。
しかしながら、こうした治療でも症状の改善が思わしくない場合が少なくなく、そのために鍼灸を試みられる方が多いのだと感じます。
発症の背景について
耳鳴り・難聴・めまい・顔面神経麻痺の患者さんには、心身ともに大きなストレスを抱えているケースが多く見られます。(ご本人に自覚があるかどうかは別として)
例えば、過酷な労働環境や人間関係によってストレスが徐々に蓄積し、自然治癒力が低下している場合です。そこに風邪の長期化や身近な人の死別といった“第2のストレス”が加わることで、一気に症状が発症するケースをよく目にします。
もちろんストレスだけが原因ではありませんが、何らかの形で発症に関与していることは間違いないように思われます。

治療方針について
これらの症状では、胆経・三焦経(体側を走り耳へと至る経絡)に反応が出ることが多いため、全体治療としてまず「胆・三焦の経絡治療」を行います。
胆・三焦経絡と耳の関係
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東洋医学では、肝(胆)経は感情面の「怒」と関係が深いとされます。
長期間イライラや我慢を強いられる環境にあると、気の流れが滞りやすくなります。 -
胆・三焦経絡は「耳」を巡り、聴覚や平衡感覚を担う器官と密接に関わります。
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また、顔面神経は聴覚神経と並走し、耳の前あたりから顔の筋肉を支配しています。
こうした理由から、耳や顔の症状に対して胆・三焦経絡の治療は有効と考えられます。

実際の治療例
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手の三焦・小腸経にあるツボ(中渚・外関・翳風・養老・支正など)から反応を読み取り、必要に応じて治療します。
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顔面神経麻痺に対しては、必要な場合のみ顔面部に鍼を行います。深さは3~5mm程度で、痕が残ることはありません。
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ほとんどの患者さんは首・肩・背中が強くこっているため、熱刺激が必要な反応(経筋症)には灸頭鍼を用いて改善を図ります。
治療により経絡と耳の反応が整ってくると、それに伴って各症状も徐々に軽減していきます。