頚椎症・むち打ちについて

頚椎症やむち打ちなど、首の痛みを伴う症状は鍼灸が効果を発揮しやすい疾患の一つです。

一般的に病院や接骨院で行われる治療は、首を引っ張る牽引(けんいん)、干渉波などの電気治療、ホットパックなどが中心です。
しかし、これらの治療で症状が改善しないために、鍼灸を希望される方が多く来院されます。

特に牽引は、無理に筋肉を引き伸ばすことでかえって緊張を高めてしまう場合があり、個人的には推奨できません。
また、ブロック注射も痛みを一時的に止めるだけで、根本的な解決には至らないケースが多く、薬の効果が切れると再発することも少なくありません。

頚椎症やむち打ちは、一時的な寝違えとは異なり、東洋医学でいう**経筋症(熱を加えないと緩まない頑固な症状)瘀血(古血の滞り)**が関わっていることが多く、単純な牽引や注射では十分な効果が得られにくいのです。
そのため、患部に優しく直接アプローチできる鍼灸治療をおすすめします。

※注意点として、強いマッサージは控えてください。急性期には炎症や靱帯損傷が起きている可能性が高く、強い刺激は炎症を広げてしまうリスクがあります。


頚椎症・むち打ちの病態

頚椎症やむち打ちは、単なる肩こりに比べて症状が強く、病態も複雑です。

  • 痛みの部位は首の付け根、耳の横、鎖骨周辺など人によって異なります。

  • しびれや痛みが腕・手首・指先にまで広がることもあります。

  • 特に事故直後は炎症や靱帯損傷が強く、四六時中、筋肉がつったような状態になることもあります。

東洋医学的にも、頚椎症は単純な肩こりとは異なり、経筋病(筋肉の冷え)や瘀血が複雑に絡んでいます。これらは時間を要しますが、根気よく治療を続けることで徐々に反応が解消し、症状が軽減していきます。


頚椎症・むち打ちの治療

頚部の症状であっても、まずは全身の経絡を整える全体治療から始めます。
多くの患者さんは、長期の鎮痛剤使用や痛みによるストレスで消化器系に負担を抱えており、その影響が経絡を通じて頚部の痛みを誘発しているケースが少なくないからです。

その後、首に関与する経絡を特定し、まずは手足に「引き鍼」を行って気を分散させます。
次に、首の患部には浅く優しい鍼を行い、必要に応じて**灸頭鍼(鍼の上にもぐさを炊く)**を用います。

ただし炎症や熱感が強い場合には、灸頭鍼は避け、2~3mm程度の浅い鍼で熱取り・消炎作用を狙います。

さらに、患者さん自身が自覚していなくても、腰部・仙骨部・顎関節部などの歪みが関連していることがあるため、これらも併せて治療します。

数回の治療で痛みが取れると「治った」と感じやすいのですが、瘀血が残っていると再発のリスクがあります。
特に梅雨の時期、風邪を引いた時、精神的ストレスを受けた時などに、鎮静化していた瘀血が活性化し、再び症状が出ることがあります。

そのため、瘀血の反応が完全に消えるまで根気よく治療を継続することをおすすめします。

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