膝痛(変形性膝関節症)について

横断歩道などで足を引きずりながら歩いている方を見かけると、職業柄どうしても「膝が悪いのだろうな…」と目がいってしまいます。

特に女性は45~55歳で閉経を迎えると、ホルモンバランスの変化によって骨からカルシウムが失われやすくなります。その結果、骨がもろくなり、体を支える膝に負担がかかりやすくなります。

学生さんの場合、バレーボールなどのスポーツで「ジャンパー膝」と呼ばれる靱帯の炎症が起こることもありますが、圧倒的に多いのは中高年に見られる「変形性膝関節症」です。


膝痛の原因と西洋医学での対応

病院では、45歳を過ぎて膝の変形がレントゲンで確認されると、多くは「変形性膝関節症」と診断されます。治療としてはホットパックや電気治療、そして手術を勧められることが一般的です。

しかし、手術には術後の傷跡や長期のリハビリが伴い、必ずしも症状が改善するとは限りません。せっかく手術をしても痛みが残る方も少なくありません。

西洋医学では「骨の変形そのもの」を痛みの原因ととらえる傾向がありますが、鍼灸治療では骨の変形を治せなくても痛みの改善は可能で、普段通りの生活に戻れる方も数多くいらっしゃいます。


鍼灸からみた膝痛治療の考え方

膝の痛みの治療では、膝そのものよりも「腰から仙骨」の治療が重要です。実際、ほとんどのケースで膝には鍼を打たず、腰部の治療だけで痛みが軽減することが多くあります。膝の痛みは腰や仙骨からの影響を大きく受けていると考えられます。

そのため、手術はあくまでも最終手段と考え、まずは鍼灸治療をお試しいただくことをお勧めします。


治療の流れ

東洋医学では「五臓六腑の調和」を基本とします。したがって、まずは全身のバランスを整える治療から始めます。

膝に直接鍼を打つことは少なく、必要に応じて瘀血(おけつ:血の滞り)の処置を行う場合がある程度です。それよりも、膝を通る経絡や腰・下腹部にみられる瘀血や冷えの改善の方が効果的です。

特に中高年の女性の場合、更年期症状(のぼせ・頭痛など)が膝痛と同時に現れることも多いため、それらをあわせて治療することが重要です。

また、帝王切開や子宮筋腫などの手術歴がある方は、自覚がなくても下腹部の「気の低下」がみられるケースが多く、そこに瘀血や冷えが入り込み、経絡を介して膝痛を引き起こすこともあります。


まとめ

膝の痛みは局所の問題に見えても、実際には全身の状態と深く関わっています。根本的に改善するためには「全身治療」が欠かせません。膝痛でお悩みの方は、手術を検討される前にぜひ鍼灸治療をお試しください。

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